
この船舶は、液状化物質を積載しない場合でも、IMO-A.167 の全ての要件を満たしているわけではない。即ち、A.167 は、復原性基準としては厳しいものであり、現在は内航貨物船には適用していない。しかし、国際船級協会連合(IACS)に属する船級協会は、全て A.167 を満たすことを要件としている。 貨物の量が多く無い状態であっても試計算対象船舶がこの要件を満たさない主な理由は、乾舷が小さいことによる。 3.6.4. まとめ 貨物を "Heavy Liquid Cargo" と考え、その自由表面影響を考慮した復原性を、IMO-A.167 に基づいて評価した場合、現在の内航の含水液状化物質運搬船では、基準を満たすことが困難であることを示した。前述の通り、この計算結果は、直ちに現行国内基準の問題点を意味するものでは無いが、含水液状化物質運搬船が備えるべき要件については、さらに検討が必要なことを示唆していると考える。 我が国の基準では、貨物の移動により船体が一定程度傾斜した場合に、これを修正するだけのバラティング能力を有することも要求している。この要件の適否については充分に検討していないが、バラスティングにより船体傾斜を修正した後に貨物が反対側で移動した場合、船舶は非常に危険な状態になることが予想される。よって、バラスティングの要件は、その運用方法と併せて明記するといったことも考えられる。 ばら積み貨物、就中液状化物質の性状は複雑であり、貨物を "Heavy Liquid Cargo" と見なすことの妥当性についてもまだ充分に論じられていない。含水液状化物質を運送する際の貨物の移動量の拘束方法(縦通隔壁の間隔)及び復原性が満たすべき要件については、さらに検討することが期待される。
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